参考記事その1 渡部昇一先生

先日亡くなられた『知の巨人』渡部昇一先生が、東日本大震災の翌年1月に月刊誌「致知」に投稿した文章の一部です。

~~~ 引用ここから ~~~

■低線量の被曝は健康にいい

「いま福島で起こっている問題は被曝自体ではなく、被曝への恐怖である」
これは『放射能と理性』の著者であるオックスフォード大学名誉教授ウェード・アリソン博士が講演で述べた言葉である。福島第一原発の事故以後の状況を的確に表現した言葉と言えよう。茂木弘道氏たちによって、こうした科学的見解がようやく出回っていることを歓迎したい。

放射線は人体に有害である----この認識が生まれたそもそもは約80年前に遡る。
遺伝学者のハーマン・マラー博士がショウジョウバエのオスにX線を照射する実験をおこなった。すると、その二世代、三世代にグロテスクな形態のショウジョウバエが発生した。
それは放射線がDNAを傷つけるからだと考えられた。
1946年、マラー博士はノーベル生理学医学賞を受賞した。ノーベル賞受賞という権威づけもあって博士の説は放射線の人体への影響を考える上で基本となった。

しかし、何しろ80年前の研究である。当時はDNAが物質であることが分かっている程度にすぎない。その後、これもノーベル賞を受賞した分子生物学者ジェームス・ワトソン博士らの研究で、DNAが螺旋状の形態であることや分子構造まで分かり、DNAの知見が飛躍的に拡大したことは、ご存知のとおりである。

それとともに、DNAを傷つけるのは放射線だけではない。様々な要因によって、常にと言ってよいほど傷ついていることも分かった。人体では1日百万回ぐらいDNAに傷がつくという。

だが、それにしては次世代や次々世代に異常が現れることはほとんどない。なぜか。生物には修復酵素があって、DNAの傷を絶えず修復しているのである。
もっとも、修復酵素を持たない例外的な生物もいる。マラー博士が実験したショウジョウバエのオスこそは、その修復酵素を持たない稀なる生物の一つだったのだ。

一方、放射線の人体に及ぼす影響も研究が進められた。1920年代頃から医学の分野でX線が使われ始め、放射線障害も認められるようになったところから、ラットなどを使った実験が盛んに行われ、放射線に関するデータが集められていった。
そして、これらの研究の延長線上に、民間団体のICRP(国際放射線防護委員会)が1950年に設立された。このICRPは放射線に関するデータを示し、勧告を行っている。

そして、このことはぜひ頭に入れておいて欲しいのだが、日本を始め世界各国が放射線に関する法令の基準にしているのだが、ICRPの示すデータと勧告なのだ。
例えば、原発で働く作業員の被曝線量は年間100ミリシーベルトまでが安全値で、それを超えた場合は原発現場から外すといった決まりは、ICRPの主張に基づいているのだ。低線量の影響のデータはICRPにはない。

ところが、人類は広島、長崎の原爆投下を経験し、チェルノブイリの原発事故を経験した。これは大変不幸なことではあったが、放射線の影響について膨大なデータが蓄積され、ICRPの示す数値や勧告とは異なる現象が分かってきたのである。

短時間に一気に大量の放射線を浴びると、様々な異変を発症して死に至る。これは確かである。大量の線量の一気の被曝は、有害を通り越して危険極まりない。
では、低線量の放射線を長時間浴びた場合はどうか。これが無害どころか、健康にいいことが分かってきたのだ。例を挙げよう。

鳥取県の三朝(みささ)温泉はラジウム温泉として有名である。ラジウムは言うまでもなく放射性物質である。1992年に調査したところ、地元三朝町の年間放射線量は10ミリシーベルトであった。
では、三朝町のがんによる死亡率はと言えば、全国平均を1とすると、0,49、半分以下だったのである。特に消化器がんは全国平均の5分の1ぐらいである。

似たような例は他にもある。
台北に1万人が居住する大規模マンションがある。建築は1982年。ところが2002年になって、マンションの建築資材に使われた鋼材が放射性コバルトに汚染されていることが分かった。調べると、マンション内の放射線量は年間50ミリシーベルトに上った。早速住民の健康調査がなされた。その結果は意外なものだった。
台湾のがん死亡率は年平均10万人に対して166人である。ところが、このマンションの住民のがん死亡率は10万人に換算すると、僅か3,5人だったのである。

最近、東京・世田谷の住宅地で600マイクロシーベルトの放射線量が観測され、大騒ぎになった。正体は、いつ、誰がそうしたのかは分からないが、ある民家の床下に埋められていたラジウムだった。その民家には何も知らずに50年来住んでいる人がいた。
札幌医科大学の高田純教授によると、その住民の年間被曝推定線量は90~180ミリシーベルトになるという。そして、この人は現在92歳で健在である。

大量線量の一気の被曝は有害だが、低線量の長時間の被曝は健康にいい。今ではこれが科学の世界の常識になっている。
このように理解すればいいだろう。肩叩きは凝りをほぐし、血行を促して健康にいい。トンと1回叩くと250グラムの重さが肩にかかるとしよう。
トントントントンと4回叩くのに3秒、加える力は1キロとなる。1分で20キロ、20分叩けば400キロ。これぐらい叩けば体がほぐれ、爽快になる。
では、400キロで一気にドンと叩いたらどうか。骨折して病院に担ぎ込まれる羽目になる。放射線の人体への影響もこれと同じことなのだ。

■迷信に惑わされるな科学的になろう

トーマス・ラッキーという生化学者がいる。ミズーリ大学名誉教授で、ホルミシス効果の研究で知られる。劇薬は人体に有害である。だが、ある種の劇薬を少量投与すると健康に効果がある。これがホルミシス効果である。
博士は放射線にもホルミシス効果があることを突き止めた。低線量の放射線は修復酵素の活性化を促し、健康をもたらすと分かったのだ。

では、どれぐらいの線量が健康に効果があるのだろうか。先に言葉を紹介したアリソン博士は、月間100ミリシーベルト、年間1,200ミリシーベルトまでの被曝は安全で健康にいい、と断言している。

となると、福島第一原発周辺で住民を強制的に非難させて苦しい生活を強い、年間5ミリシーベルト以上の土壌は剥いで除染するという措置はどういうことになるのか。愚の骨頂、とアリソン博士はこれも断言している。
福島第一原発20キロ圏内の放射線量は、平均で毎時1マイクロシーベルト以下、ホットスポットでも10マイクロシーベルトを超えることはない。

言うまでもなく、マイクロシーベルトはミリシーベルトの1,000分の1の単位である。
こんな低線量はなんの問題もなく、むしろ健康にいい状態である。そして、原発は着実に冷温停止に向かっている。もはや何の危険もないのだ。
これ以上の避難生活を住民に強いるのは、まさに愚の骨頂である。まして土壌の除染などは呆れるほかない。むしろこの地域は健康ランドとして推奨されるべきである。

ちなみに、ラッキー博士は放射性廃棄物を集めて健康をテーマにしたリゾート施設の建設を提案しているほどである。

にもかかわらず愚かなことが行われているのは、先述のICRPが示すデータと勧告に従っているからである。
このICRPは最新の知見をまったく採り入れず、旧態依然の低線量の場合を抜きにしたデータに基づいている。結果としてICRPは放射能の迷信をばらまく根源になっている趣だ。アリソン博士はICRPは改めなければならないと強く主張する。

だが、あるイデオロギーに基づいて放射能の迷信を増幅させている勢力がある。脱原発、自然エネルギーを唱えている連中だ。
魚の汚染は、野菜の汚染は、どこそこで高い線量が出た、とヒリヒリするような被曝の恐怖を煽り立てているのはこの連中である。その主張の根本が迷信であることを暴いていけなければならない。

変なデータが学界や一般人を長く惑わすことがある。
それは約100年前、ロシアの医学者アニチコフがウサギに卵を食べさせた実験がある。ウサギのコレステロール値が急に高くなった。その実験結果のため、「卵を食べるとコレステロール値が上がる」と世界中の医者は患者に言い続けた。しかし、ウサギは卵を食べない動物なのだ。犬で実験してもコレステロール値は上がらない。
人間でも上がらないことは日本の国立健康・栄養研究所でも人体実験済みだ。

私はこれを故・三石巌博士の本で知って、もう10数年、毎日卵を食べて今年は81歳になるが、コレステロール値は正常値だ。

マラー博士も、X線をショウジョウバエでなく、モルモットでやるべきだった。
広島の原爆被災者の追跡調査でも、遺伝に問題があった例はゼロと報告されている。

日本の原発技術はマグニチュード9の地震にもビクともしないことが証明された。その上に津波への対策問題が発見され安全性は完璧と言えるレベルに高まった。

アリソン博士はそう明言している。

確かに日本の原発技術は世界最高レベルである。地震だけで問題を起こした原発は一つもない。
そして世界のこれからは、新興国も開発途上国も大変な電力を必要としている。
日本は原発技術で世界に貢献できるし、貢献しなければならない。迷信を煽る脱原発に惑わされてはならない。原発は推進すべきである。
政府が脱原発などと言うと、核を研究する日本人の学生・学者がいなくなる。最高の原発技術を身につけた技術者たちは根こそぎ中国や韓国に引き抜かれていくであろう。

もっとも最近は、原発推進を言うと、東電からいくらもらったのだ、ということになるらしい。断っておくが、東電と私の関係は、我が家で使った電気料金を毎月支払う、それだけである。

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このような科学に立脚した、きちんとした情報がちゃんと伝わっていれば現在の福島避難児童のいじめ問題や、科学的に安全だけれど安心ではないなどと言った豊洲移転問題など起きなかったのにと思うと残念です。

渡部先生のご冥福をお祈りいたします。

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